概要
依頼者は、70代の女性。亡くなった母が作成した遺言により、母の遺産はすべて依頼者が相続したが、これを不満に考えた依頼者の兄(相手方)が遺留分減殺請求を行使し、代償金を支払うよう、依頼者に対し調停を申し立てたケース。また、相手方は、亡くなった母が生前になした、自宅を依頼者へ贈与した取引についても特別受益であると主張した。
争点
遺留分減殺請求の金額及びその内容
結論
何度も調停を実施した結果、亡くなった母が生前に依頼者へ自宅を贈与した取引を特別受益として遺産に加えた上で、侵害された相手方の遺留分相当額を支払う内容の調停が成立した。
一言
依頼者にとって、相手方による遺留分減殺請求は、亡くなった母の意思に反し許せないと考えていました。特に、相手方は、亡くなった母の介護は、一切せず、また亡くなった母の生活費についても全く負担せず、母に寄り付こうともしなかったにもかかわらず、母が亡くなったことを知ってからは、依頼者に対しあらゆる点で金銭の支払い請求をしてきたとのことです。遺留分減殺請求は法律により認められた権利であるとはいっても、依頼者にとっては、相手方の権利行使は到底許しがたいと考えていました。その意味で、本件は、依頼者のお気持ちの落ち着き先が一番問題となりました。
私は、調停の状況や内容、相手方から受領する主張書面について、その趣旨についてきちんと説明していましたが、相手方の主張内容が事実無根であるとして、相手方の主張する事実を前提とする請求内容を受け入れることはなかなか納得できない状況でした。
最終的に、裁判所による調停委員会案を提示してもらったものの、これを受け入れるかどうか相当に悩んだ結果、最終的には、相手方に対する手切れ金と見なすものとして調停を成立させることになりました。
私は、裁判結果についての予測内容をきちんと依頼者に説明した上で、依頼者の希望を聞くようにしております。依頼者のお気持ちを大事にするとはいっても、裁判所が依頼者の希望を受け入れる可能性があるかないかの点については、はっきりした物言いをするように心がけています。美辞麗句ではなく、真実を正確に率直に伝えることが、依頼者のためになるものと考えているからです。