概要
依頼者は、30代の男性。幼少時に母と生き別れ、その後一度も会っていない。
突然、母の夫(相手方、依頼者の父ではない)の代理人を名乗る弁護士から手紙を受け、手紙には、母が亡くなったこと及び、母の夫の老後の生活のため、遺産相続を放棄する内容の遺産分割協議書に署名をすることを求めるものであった。
依頼者は、手紙に書いてあるとおり、相続放棄しなければならないものかどうか確認するために弁護士に相談。弁護士に相談した結果、遺産相続することができることを知り、弁護士に依頼。
争点
適正な相続額
結論
交渉の結果、依頼者が1500万円を取得する内容の遺産分割協議を成立させた。
相続人は、依頼者と相手方のみ。亡くなった母の遺産を確定させた後、依頼者は、不動産等の特定の遺産を相続するのではなく、金銭のみ取得することになった。遺産の合計額が3000万円であったことから、依頼者が1500万円の現金を取得した。
一言
依頼者は、当初、法定相続分を主張するつもりはありませんでした。もっとも、最初に相手方弁護士から送付されてきた手紙の内容が高圧的でした。端的に言えば、依頼者と亡くなった母との間で真実の親子関係があるかどうかは疑わしいが、戸籍上親子とされているため念のため送るものの、これまで全く依頼者と亡くなった母が交流していなかったことからすれば、依頼者が相続すべきではなく、相手方の老後の生活のために相続を放棄してほしい。そのため、印鑑証明書を依頼者が取得の上、同封の遺産分割協議書に実印を押印の上返送してほしいとのことでした。
このような高圧的な文書の送付を受けて、依頼者はむしろ法律上認められる正当な権利を行使しようと決めたのでした。
このように、弁護士や司法書士が、相続人に対して、事前の連絡もなく高圧的な内容の文書を送付するというケースについて、よく相談を受けます。
私は、相続放棄をお願いする立場の人がこのような書類を送付することは逆効果であると考えます。
私は、他人に何かを依頼するのであれば、きちんと説明し、理解いただいた上でないとうまくいかないことは認識しています。放棄をしてもらいたいという方が相談者としていらっしゃった場合には、そのように助言をしています。